2010/07/02

特別講義 _ 佐々木千穂さん(6/30)

今回はインフィールドデザインの佐々木千穂さん。「体験によるデザインコンセプトとビジネス」をテーマにお話していただきました。

佐々木さんはインフィールドデザイン代表で、Gマークの審査員をされています。イリノイ工科大のMaster of Design卒業後、GKグラフィックスでグラフィックデザイナーをされていました。その後、IDEOの東京オフィスで5年間お仕事をされたのち、2004年から現在のインフィールドデザインを創業されました。

■佐々木さんのデザイン手法
提供すべき「経験」からデザインをしていく
望ましい経験を考える→製品やサービスを考える→機能を考える

『experience design』

しかし、誰のデザインをするの?

「誰も」って誰のこと?
条件さえあえば大丈夫なの?

頭で考えていても「誰か」のための「望ましい経験」はデザインできない。

↓紹介したい事例
■バット・ムーアさん
本当は26歳なのに85歳になって3年間過ごした。メイクアップアーティストや衣装など、技術を使って本格的な変装をした。からだの動きも不自由になるように布を巻いたりした。
↓なぜこういうことをしたのか?
自分がおばあさんになったらどういう気持ちになるのかを知るため。もともと工業デザイナーだったが、当時会社は主要ユーザー=お金を持っていて、若い20代30代を対象にしたデザインばかりしていた。ビンのふたをなかなか開けられないおばあさんのような弱い人に対してデザインされたものが世の中に少なかった。周りに言っても分かってくれる人がいなかった。主要ユーザーにだけデザインすることに違和感を抱いていた。「自分ではない人」に共感をして、何が求められているのかを、その人の視点になってどういう気持ちになるのかを知る。そういう試みを行った人。

・「傾向」ではなく、「共感」が重要。
老人の生活では何が大変なのかを知る=共感
→傾向:データからお客様が求めていること。
→共感:重いスーパーの袋をS字フックにかけて電車に乗っている間だけ掛けておく。さりげない写真からわかること。
・共感のための手法=オブザベーション(観察)
・共感するためにオブザベーションで探すもの(ヒントになりそうなもの)
 ー意図通りにでない使われ方 ex:座布団でパソコンを隠す
 ー創造的な行為 ex:操作させないようにペットボトルで覆う
 ー手順や順応 ex:大画面で見るために壁に穴を開けてプロジェクターを入れた
 ーその人にとって何が大切か、を示すもの
  →家に伺い、その人の「生」の生活を見ることで分かることがある
 ー興味深い矛盾→人の言うことが必ずしも正しいとは限らない。
 ー「正しい」使い方をしない理由 ex:明るさ調節のために1日に何回も電球を取り外しする
 ーいつもの「行為」
 ー痕跡 ex:ホコリがたまっている


■オブザベーションの手法:「見る」「試す」「頼む」

①見る
何をしているのかを言わせるのではなく、前後関係の中で何をしているのかを観察する
→いったい何をしているのか、観察する。まさに観察!
→人は思っていることをうまく言えないし、言っていることが必ずしも本当ではない。
ex:ビデオによる観察
ex:fly on the wall(壁にとまったハエ):最初はちょっと気になるけど時間が経つうちに気にならなくなる、存在すら忘れてる。というように、じっと邪魔にならないようにその人の日常の営みを観察する。
ex:シャドウイング:何かしている人に影のようにくっついていく。

②試す
視点を理解するため、人の経験を強調する方法を考える
→実際に自分も経験してみましょう、というもの。
ex:ロールプレイング(ex:実際に患者になって疑似体験する)
ex:行動サンプリング

③頼む
人々の協力を求める
→相手に協力してもらい、何かを発見する
ex:インタビュー:コアじゃない人=極端なユーザーにこそ見過ごされていた何かがある
ex:デモンストレーション:実際にやってもらう
ex:考えを声に出す
ex:写真日記:実際に伺う短時間だけでは限界があるため、伺う3日間前くらいから日記を付けてもらう。プライベート空間や夜間などの様子も伺える。
ex:ドローイング:物事をどう捉えているかを書き出してもらう
ex:ガイドツアー
ex:show&tell:持ち物を見せてもらう、共感するための手がかりを見つける
ex:whine&dine:気心知れた仲間の会話から


集めた素材を発想に活かす
データを集めるのは誰にでもできることだが、その集めた素材をどう調理するかはシェフの腕にかかっている。調理の仕方を大事にしてほしい。

事実から直接発想に導く近道は危険!ちょっと遠回りをしてほしい。
エクスペリエンスの山:事実→洞察→望ましい経験→発想



去年のGマークのとき、同じユニットの子で佐々木さんの事務所でアルバイト(?)をしている友人から佐々木さんのことを教えてもらい、HPを見て「是非私もバイトしたいです!」と連絡をしていたんですが、時期が合わず流れてしまい、、、。それが今回講義という場でお会いできると思っていなかったので、本当に嬉しかったです^^
懇親会はお子さんのお迎えがあったため短い時間でした。でも先生との会話で色々な著名な方が出てきて面白かったです。
トロントへ行く前に、8月に入ったら事務所に伺わせていただきたいです^^
 

0 件のコメント:

コメントを投稿